雪野山古墳の副葬品
副葬品は、3面の三角縁神獣鏡を含む銅鏡5面、武器・武具を中心とする鉄製品に、多数の銅鏃、初現的な形態をもつ鍬形石と琴柱形石製品等の石製品類、ガラス小玉、供献用の壺、さらには靫や合子など様々な漆製品で構成されています。
- 小札革綴胄の出土状況
- 銅鏡の出土状況
- 鍬形石の出土状況
- 竪櫛と合子の出土状況
石室内の保存状態が良好であったため、副葬品本来の配置状態や副葬品のセット関係が把握でき、その意義はたいへん大きいものです。
多彩な漆製品で特徴付けられる前期古墳出土の一括資料として極めて重要であることから、平成13年6月、重要文化財に指定されました(副葬品218点附棺材)。
漆製品(34 点) | 靫2、靫の背負い板、竪櫛26、合子、木製短甲、菱形文様を持つ漆製品など |
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銅鏡(5 点) | 内行花文鏡、だ龍鏡、三角縁波紋帯盤龍鏡、三角縁唐草文帯四神四獣鏡、しん出銘三角縁四神四獣鏡 |
石製品(5点) | 鍬形石、琴柱形石製品、紡錘車形石製品、管玉 |
鉄製品(およそ75点) | 小札革綴胄、鉄鏃43本、鉄刀2、鉄剣5、鉄ヤリ3、ヤリガンナ2、鑿1、針状品3、鉄鎌2、刀子5以上、ヤス9~11以上 |
銅鏃(96点)、ガラス小玉(2点)、壷形土器(1点) |
三角縁神獣鏡と倭鏡
前期古墳には、銅鏡が盛んに副葬されます。
魔よけや、吉祥紋・吉祥句によって富栄えることが祈られ、また威信材でもありました。
三角縁神獣鏡は、盤龍鏡タイプ1面と四神四獣鏡タイプ2面を含んでおり、三角縁神獣鏡の中でも古い時期のものです。内行花文鏡とだ龍鏡は緻密な作りで、国内産の古式のものです。
国内産の精巧な鏡が古い三角縁神獣鏡と出土することで、国内での鏡生産が従来よりも遡って考えられるようになりました。
- 1号鏡 内行花文鏡径約 23.6cm
- 2号鏡 だ龍鏡径約 26.0cm
- 3号鏡 三角縁波紋帯盤龍鏡径約 24.7cm
- 4号鏡 三角縁唐草文帯四神四獣鏡径約 24.1cm
- 5号鏡 しん出銘三角縁四神四獣鏡径約 24.2cm
靫と銅鏃
棺内靫の取り上げ整理後の状況
靫は弓矢を入れる矢筒で、板に結びつけて背負う形のものです。棺内出土の靫は、革に絹糸を菱形文様に組み上げ、黒漆で固めた筒部分と漆塗木製の底箱からできています。 外面に水銀朱を塗布し、鮮やかな赤色に仕上げています。
靫には銅鏃が鏃側を上にして納められます。光り輝く美しさを誇示した儀礼用の鏃とされます。
棺内靫に伴う銅鏃
石製品
石製品は、硬質な碧玉でつくられた宝器的な意味合いをもつ遺物です。鍬形石(1)は、九州でつくられた貝輪を祖形にした腕輪形の石製品で、系譜上の鍵となる最古相のものとして知られます。琴柱形石製品(2)は、Y字形の儀仗のような形の石製品です。被葬者の頭部近くから出土し、頭部近辺を飾る祭具と考えられています。 管玉(3)は、古い時期には数点しか副葬されない貴重品です。紡錘車形石製品(4・5)は、貝製装飾品を祖形とした石製品で、棺内出土の靫の底部近くから出土しました。
鉄鏃と鉄製農工漁具
鉄鏃は43本が出土し、多様な形態のものが副葬されています。矢柄がなく、鏃身だけ副葬されたものもあります。またわざと壊して副葬されたものもあり、銅鏃の一部や、刀子、ヤスなども破壊副葬されたものと考えられています。
ヤリガンナ(1・2)、鑿(3)、鎌(4・5)、刀子(6~10)
鉄鏃
ヤス
小札革綴胄
小札革綴冑復元
小札革綴胄は初現期にあたる甲冑で、その類例は少なく、形態からは中国大陸からもたらされたものと考えられています。木製短甲の痕跡も見つかっており、セットで副葬されていたようです。
小札革綴冑
刀剣類
鉄ヤリ
棺内の中央区画および南区画から刀2点、剣3点が出土し、棺外からは剣2点、ヤリ3点が出土しています。
南区画の刀は長さ96cm以上、古墳時代前期でも有数の大きさです。棺外のヤリは、柄の漆膜の痕跡から、柄を含めた長さが4.6mの長大なものであった可能性があります。
木質で腐食しやすい柄の部分が残っており、刀剣類の構造の解明に成果をもたらしました。
壺形土器
壺形土器は、東海地方の土器の影響をうけて作られた葬送用の加飾壺で、棺内の南側に立った状態で置かれていました。壺内部に水銀朱が付着しています。被葬者の頭部、鍬形石周辺に特に水銀朱が残っていたことから、木棺中央区画に被葬者を安置して副葬品を置いたのち、壺から水銀朱をまく儀礼をおこない、そのあと土器を南区画に副葬したと考えられています。